もひとつ

回答そのにっ。

魔術の短距離転移・及び多様について


まず、短距離転移についてですが、これに関しては可能です。
転移魔術は習得が難しいとされる六属式、その中の『月』に属する魔術ですが、
極めて有用性が高い魔術であることから、何百年・何千年に渡って改良と研究が重ねられ、
その果てに構成が徹底的な最適化を施され、とても構成を識りやすい魔術にまで昇華されました。
階位8ぐらいの魔術師でも、転移の魔術を行使することが可能となっています。


この術式による転移は、世界に定められた空間の座標を指定し、
そのポイントに自分の体を転移させる……というものなので、
転移後の距離差は難易度に関わってきません。
ただし、転移先の座標を正確に把握していなければ、
石の中に埋まったような形で転移してしまったりするため、距離差の離れすぎた転移はあまり行われません。
構成の中にある程度のセーフティ機能が備えてあるので
(転移先の空間に障害物のようなものが存在すれば、若干座標をずらして転移する)
転移による事故はそう頻繁には起こるものではありませんが……。
魔術師は自分の知覚を拡大し、レーダーのように周辺一帯の空間の情報を把握する魔術があるため、
予め転移先の情報を取得し、その知覚レーダーの圏内で転移を行う事が多いです。


短時間内による転移の連続といった事は、理屈の上では十分に可能です。
ただ、あまり行われたりするものではないです。
というのも――転移を行うと、その瞬間に自分の周囲の光景や情報というものは『一変』します。
光景が変わっていく過程・推移が一切切り落とされ、コマ落としのように変化する。
これが想像される以上に、術者にとって意識上の『負担』になります。
短距離転移の連続を、例えば敵をかく乱するための戦闘技術にまで昇華するのならば。
術者に求められるのは、人並み外れた空間把握能力。
あるいは、血も滲む努力の積み重ねの上に『負担に振り回されない』だけの耐性を会得するか。
魔術とは全く別の才能と資質、努力を求められることだと思います。


しかも、それだけ努力して技術にまで昇華しても、実のところあまり有用性が無いように思います。
人間相手ならそれだけの苦労を労さずとも普通に魔術で仕留められるでしょうし、
魔術師を相手に取った場合、こちらががどれだけ転移を重ねて不意打ちを狙おうと、
相手がこちらのあらゆる攻撃を防ぎきるだけの防御壁を一枚張られれば全ての攻撃は無効化されてしまいます。
あるいは相手が転移の魔術を利用し、こちらの知覚できる距離の範囲外にまで転移されて、
そこから回避不能・大威力の魔術で力押しに捻じ伏せられてしまうとそれだけでどうしようも無くなります。


もっとも、先方もまさかそんなメリットの少ないトリッキーな技術を会得してるとは想像しないでしょうし、
そういった点から意表を突くことが出来るという点では有用性があるかもしれません。
あと、人間相手の場合においても、例えばアトリ
ペネトレイターとしての実力に加え、階位1が協会総帥、2が『長老』とまず相対することの無い相手の中、
 実質的に出会う可能性のある相手で最も階位の高い3の障壁も強引に破壊する拳銃を所持)
あるいは『博士』
(科学への愛というだけで何故か魔術が効かない。多分理屈は在るんだろうけれどそれが判らない)
のような変態的な強さの相手では、セオリー通りの戦い方では荷が勝ちすぎるので、
こういった奇術、匠の技というものを使ったほうが勝機はまだ伺えるでしょう。


どちらにせよ、変わり者と呼ばれることはまず間違いないでしょうが(笑

  • 短距離転移は可能
  • 連続での仕様も可能
  • ただし、連続短距離転移は魔術とはまた違った資質を求められる


こんなところで。