さて

鍵打さんの質問について解答させていただこうと思います。
思いのほか長くなったので、まず一つ目の回答から。

階位の上がり方について



試験や検定のような対外にはっきりとした基準のようなものは無く、
魔術というものを『知悉』していく事で上がっていくと考えられています。
研究肌の魔術師も実践派の魔術師も、階位さえ同じなら同じパワーの魔術を行使出来る事から、
魔術の仕組みや理屈を理解している事よりも、実際に魔術を行使出来る事の方が階位に関わってます。
下層階位の9・8・7ぐらいだと、自分の階位で識ることの出来る魔術をどんどん会得していくうち、
ぽこっと階位が上がった、みたいな事がとても多いです。
だから極端な話を言えば、魔術についての理屈を学校等で全く教わっていなくても、
自分で本能的・感覚的に理解していく事が出来れば一足飛びで階位がどんどん上がっていく事になります。


が、魔術師は魔術の理屈・理論を習得しないで魔術を会得させる事をよしとはしません。
その理由は合理的なもので、魔術には一定の法則性や規則性があり、
現在の魔術の体系はその法則性に則って枝葉を伸ばすようにして発展してきたために、
そういった魔術の『仕組み』を理屈として頭に叩き込んでいた方が格段に魔術を理解しやすく、
法則性を把握していればそれに則って応用や発展、自分独自のアレンジを施す事も格段に行いやすいからです。
自分の感性だけに頼って魔術を習得した魔術師に、高階位の者が誰一人いないという統計的な裏打ちもあります。


魔術師は生まれてきた時には誰も彼もが等しく階位9であり、
その後の勉強や修練で階位が上がっていく事から、
階位は先天的な才能より後天的な努力によって上がっていくものとされています。
そのために魔術師は、こと魔術に関する教育に対して並々ならぬ熱意と関心を向けています。
(魔術に対する教育が施されないのをよしとしない傾向は、上に書いた合理的な理由以外にも、
 『自分の子供にまともな教育を施せていない』という風に思われるのが魔術師にとって『恥』であるという、
 世間的な体裁による部分も存在します)
協会が出来る以前から、高名な魔術師・高階位の魔術師が私塾を開いたり、
あるいは街自体が積極的に学校のような教育機関を設立したり……。
協会発足後は協会自体が積極的に全国各地へ学校の設立に取り掛かり、
義務教育制度を設けて就学率を100%まで引き上げました。
ただ、それで昔から存在する私塾や教育機関がお払い箱になるかといえばそうではなく、
勉強とかでも、教え方の上手い先生によっては生徒の成績の伸びが全然違ったりするように、
『教え子の階位を引き上げるのが上手い魔術師』というのもやはりいるわけで……。
昔から存在するような私塾・教育機関等には割とこういった『教えの天才』が多く存在しているため、
協会が建てた学校には行かず、昔ながらの施設へ我が子を通わせたり、
あるいは家庭教師として招いたりする魔術師も多いです。


……とはいえ、『後天的な努力だけでどこまでも上がっていける』なら、
この世界の魔術師の過半数が階位7で構成されているという事実はありえない訳です。
上で書いたように9・8・7ぐらいまでなら、学校で教えられている内容をただ勉強し、
自分の今の階位で出来る魔術を習得していくだけで階位が上がっていきますが……。
3や4のような高い階位になってくると、心がある一定の境地に達するというか、
『悟りを開く』みたいなレベルで階位が上がってくるようになるので……。
ここまで来ると、同じ師について勉強していても到達できる子と出来ない子ではっきりと別れてきます。
それでも『教育を施して階位が上がらない』のと『教育を施さないから階位が上がらない』のとは状況が全く違うので、
魔術師は教育熱心ということで!(べべんっ


なお。
階位が上がった時は、誰に言われるでもなく『上がった』ということが本人自身で理解出来ます。
ペネトレイターの目に見える『波紋』が階位ごとに色が変わって見えるように、
階位が上がると構成から何から、使える魔術が段違いに変化しますので……。
あと、あんまり類を見るものではありませんが、階位が上がる際の条件には明確なものが無いので、
『戦闘中、死に瀕した極限状態の中で唐突に覚醒・階位向上』みたいな形での上がり方も勿論あります。


追記

魔術の要素には『属性』――『五元素』『六属式』がありますが、この要素と階位の向上の有無について。
まず『五元素』に関しては階位向上との関わりは殆どありません。
というのも、『五元素』の各属性との相性というのは先天的なものに左右され、
苦手・不得手な属性の魔術を後天的な努力で克服するのはほぼ不可能となっているからです。
それに五つの属性に分かれていると言っても、有体に言えば見た目のエフェクトが違うぐらいで(ぁ)、
各属性で発現させることの出来る魔術の現象は特に違いというものはないです。
五元素のうちの一つしか扱う事の出来ない魔術師で、階位2になった人もいたりします。


まあでも、使える属性が多いに越した事はないです(笑
五元素全部自在に操る事の出来る魔術師はかなり稀で、注目視されます。
トトさんは勿論ながら、五元素全て常識外れのパワーで使う事が可能です。


『六属式』の方は後天的な知識と実践によって覚えていく魔術で、こっちは明確に階位に関わってきます。
下階位で自分に出来る魔術を習得している最中にやがて階位が上がっていく、という感覚のように、
階位7以降、六属式を納めていくうちに階位が上がったー、という話はよくある話なので……。
ただ六属式のほうは、それぞれの属性がそれぞれに別の方向に向かって専門的な発展を遂げているので、
習得するのが難解極まるので、理屈の上では『全部納める事が可能』であっても実際はそう上手くはいきません。


それに加えて、現在は6つのうちの2つの属性を司る構成等の知識が失伝してしまってるので全部を習得するのは不可能です。
また全部の属性を扱えなくても、ヘクターがいるように魔術師の最高階位である階位1まで辿り付く事は可能です。


結論としては

  • 階位が上がるのに『これとこれとこれを会得するっ!』といった明確な基準はない(ただし階位7くらいまでなら、自分の階位で発現させることの出来る魔術を習得しているうちに自然と階位は上がっていく)
  • 知識や理屈を覚えなくても階位が上がる事はあるが、知っていたほうが階位は上がりやすい
  • 五元素は階位と関係ない
  • 六属式を習得しなくても階位が上がる事はあるが、会得していたほうが階位は上がりやすい


ぐらいで。