Blood empire -血を統べし者 2-

Blood empire -血を統べし者 2-

地方都市ベネツェラは、決して人の流通が多い大都市ではない。
各地の大都市に必ず一つはある飛行船の発着所も無ければ、道を行き交う車の姿も随分と稀だ。
空は青く高く澄み渡り――見晴らしのいい緑の台地。
東の先には鬱蒼と茂る森と、大きな湖があり――風光明媚であるのは間違いない。
だが、その自然だけで一大観光都市の名乗りを上げるには、少々力不足というものだろう。


ただ。
決してベネツェラは『田舎』でも無ければ、過疎の進んだ地でもない。
この街は――昔から、様々な芸術家を世に輩出してきたことで名の知られた街である。
絵画・音楽・彫刻・建築といった様々な分野の第一線で活躍し、
あるいは第一線の若き才者達に尊敬されている先達は、その八割以上がこのベネツェラ出身であるといわれている。
かつては牧歌的であった街並みも、この街を改築するに当たり、ベネツェラを故郷に持つ建築家の一人が、率先して線図を引いた。
昔懐かしき、母なる故郷への愛ゆえか――改築された街並みは、近代的でありながら優美さも感じさせる。
それは、人口の爆発により増改築を繰り返す大都市達には決して真似することの出来ない、余裕を持った空間の使い方が為せる業であろう。


そんなベネツェラの街を東西に分ける、モザイクタイルの大通り。
さわやかな秋風が吹き抜けるとはいえ――近海を流れる暖流の影響で、まだ日中は少し暑い。
大通りに面したオープンカフェの中、冷たいレモネードに口をつける姿が多いのも仕方の無いことだろう。

そして、そんな光景の中に溶け込むようにして。


さっぱり、溶け込んでいない男女が三名。


――他の誰でもない、先刻の神父達だ。

普段はこのぐらいのペースで(笑