で。

改めて、ガン×ソードという作品を。
ネタバレも多いと思われるのでみたくなければ『続きを読む』見ない事を推奨。


この作品は、
結婚式当日に花嫁を殺され、銃のような長剣を腰、世界を放浪して仇を追い求める男・ヴァンと、
旅路の途中で行き掛かり助ける事となり、さらわれた兄を探すために共に行く事を決めた少女・ウェンディが、
共に追い求める『カギ爪の男』を捜して旅する痛快娯楽復讐活劇です。
生身アクションだけではなく、『ヨロイ』という名の巨大ロボットの活劇もあり。
巨大な剣を操って戦うヴァンのヨロイ『ダン』は非常に格好いいです。熱いです。
バンクを殆ど使わない様子はスクライドの頃から相変わらず。



でももっと判りやすく言うと。
奥さんをブッ殺されて復讐一色に染まったおとーさんが、
『夢』や『平和』を語り、『友愛』と『友情』を掲げて『自分を理解して欲しい』男を


「うるせぇ!! 死ねえええええええええ!!」


で、ブッ殺すまでの話です(ぇ
いや、似てるんですって! おとーさんとヴァン(笑




復讐を『憎しみの連鎖』と否定したり、
悲壮感ばかりを前面に押し出し、かえって非難しようとする作品は多い。

「ヴァンよ、今の『ヨロイ』が答えを出した。
 やはり人は『明日』に生きるべきもの……。
 過去に生きるお前は、次の一撃で断罪し――終わりにする!」
「いいや、違うね!」

けれどここまで、復讐するものの『喪失感』と『怒り』、

「何……!?」
「これが始まりだ。やっと見つけた! あとは捕まえてブッ倒すだけだ!!
 ふっふ……っはっはっはっはっはッ!!」

そしてその苛烈さを『肯定』した作品は無いんじゃないでしょうか。

「オレの旅は間違っちゃいなかった!!」

劇中、様々な人物がそれぞれの思惑を抱いて『カギ爪の男』を追い求めるのですが。
その中にはヴァンと全く同じ理由(妻を殺された)で復讐を誓った男がいます。
それが『刀のような銃を持つ男』レイ・ラングレンなのですが
ええと、こいつは何てkion-kazuky?(ぇ
彼のヨロイ『ヴォルケイン』も含めて非常に格好よかった。というか兄貴がいた(笑



この作品の中で特に印象に残っているのが『表情』。
レイもヴァンも、宿敵である『カギ爪の男』を最初に目撃した時。
怒るでも叫ぶでもなく。


『笑う』んですよ。
狂気的なまでににまりと表情を喜色に歪ませ、声を裏返して笑う。


あの『活き活きとした』表情。
心に、刻まれます。



冒頭の『復讐の肯定』というのも、ただ盲目的に肯定するわけではない。

「兄さんが羨ましかった。義姉さんと……義姉さんのヨロイを手に入れて。
 でも……僕は兄さんみたいになれなかった。義姉さんが死んでも、兄さんみたいには。
 とてもとても悲しかったけど、兄さんみたいな事は出来なかった。
 僕は……臆病な人間です」
「それは違う」
「でも……」
「……俺は逃げたんだ。悲しみから。今も逃げ続けている。
 そうしなければ俺は、シノを失ったことに耐えられない。
 臆病なのは……俺だ」

盲目的に復讐を果たす事が、逃避であると判っていながら。

「貴方達は、私怨の為に戦っている。私達は――同志の『夢』の為に戦っている!!
 命は、護るものを持つ方が強いのです!!」
「正義の味方みたいな言い草だな……なら、聞かせてもらおうか!!
 俺にも『夢』があった……一人の女と、平和に、穏やかに暮らしたい。
 そんなささやかな『夢』だった。それを……あの男が引き裂いた。
 『自分に協力しない』という――ただそれだけでだ!!」
「『夢』は……より多くの人々に」
「だから必要ないと言うのか! 他の『夢』は!!
 なあ……どうなる? 『夢』を奪われたものは……その先どうなると思う?」

「残念ながら、ここで終わりです。
 これ以上貴方に付き合う時間は無い。これから長年の『夢』が花開くもので……」
「……『夢』を……」
「は?」


「『夢』を奪われたものは……どうなるか知っているか」


「はぁ……?」
「どうにもならない……決して埋まらない苦しみに。怒りに。悲しさに……!
 心と体を苛まれるんだ……それがどれほど苦しいか。
 選べ! 命を取るか、『夢』を護るか!!」

『夢』を奪われたものは、失ったものを取り返す器用な生き方は選べず。

「私はいなくなり、貴方の花嫁は生き返る。世界は平和になる。
 貴方にとってもこの星にとっても、素晴らしくご都合の宜しい世界になるのです。
 ああ……私は貴方を救いたい。最後に貴方の『友達』に……『友達』になりたいのです」


「――でぇぇぇぇあやあああッ!!」


「おや……?」
「エレナは死んだ!! お前が殺したんだ!! オレからエレナの『死』まで奪う気か!!


 死んだヤツはな、絶対に生き返らねぇんだ!!


 そんな与太話を聞きに来たんじゃねぇ!! 


 オレは!! お前をブッ殺しに来たんだ!!」


「ん……ヴァン君、私の話を聞いていますか?」
「オレの話を聞けぇッ!! エレナの仇ィィィィアアアアッ!!」
「――そうか、判りました! 君はつまり……『莫迦バカ』なんだぁ!!」

命を奪われたものは、戻らぬ命に復讐を誓う。


毎回安定した作画、突き抜けた音楽。
声優さんの好演技に魅力的なキャラと、エンターテイメント性も高い。
作り手がとても楽しんでいる、少なくとも相手の顔色を伺うような『媚』の無いこの作品。


『知らない』という事が、とても損をする作品だと思います。

「死ねええええええあああああッ!!」


当サイトは、ガン×ソードを全力でお薦めします。