本当は

作り手というのは、必要以上に言葉を喋っちゃいけないと思っていた。
語るのは口じゃなく作品。
「目は口ほどにものを言う」とは言ったもので、
自分の伝えたい事は、言葉にするより――作品に込めた方が伝わる。


だから、本来裏方であるオレがしゃしゃり出るのはおかしい。


必要以上に身を隠すこともないけれど。
作品を通して、自分のことを好きだといってくれる人がいるから。
「あとがき」のように、素の自分でこそ伝えられる言葉もあるから。


それでも。
スポットライトは浴びちゃいけないし、浴びる事も無いと思っていた。
雑記を書いているのは、毎日足を運んだ時に、何か見れるものがあったほうがいいかな、というものと、
本当に「自分のため」――「日記」という意味以外の何物でもなかった。


だからこそ、「アル」を名乗ってもいいと思った。
その名を「借りて」もいいと思った。
この名前は、自分が名乗る遥か前から、自分の作品にとって大事な言葉だったから。
それだけ、込められた力も強いから、オンラインに出る時にこの名を借りた。
いつか、今日のような日が来た時に――返す事を、誓って。


どこで、これがおかしくなったんだろう?
アルキュン? ……いや、そもそもの始まりは、この名を使って「自分」を投影してしまった「でべかぞ」か。
あの作品に、オレを投影した時。
オレは、本当なら、もっと別の名を名乗っておくべきだったか。


そして結局、でべかぞ2でも、オレは「アル」を名乗っている。
三年と言う時間は、借り物の名前であっても。
自分の身体に染み付いてしまうには、充分過ぎたのかもしれない。


なら。
この身に過ぎたことであっても。


まだオレは、「アル」を名乗ることとしよう。